海洋水産資源・生態系モニタリングの卵・仔稚魚、動物プランクトンの分析をはじめとし、一般環境調査のための海域・陸水域のプランクトン、ベントスの分析を行っています。また、水産資源の生態研究のための耳石日齢、微量元素、消化管内容物、幼生プランクトンなどの特殊生物分析も行っています。
当生物分析室では、平成18年度から、T川河口域で採集された幼生プランクトンの分析を請け負っています。当該海域は、広大な河口干潟が発達しており、特有な生物群集を形成しています。東京湾内の現存する河口干潟は稀少であり、これら生物群集の動向を調査するには、そのプランクトン幼生の東京湾への分散や、干潟への回帰を明らかにすることが不可欠ですが、プランクトンとして出現する幼生の種同定は非常に難しく、十分に網羅されたテキストはありません。そのため当分析室では、関連文献の収集を行うとともに、実際にT川河口域などで抱卵個体を採集して実験室で孵化させ、あるいは実験室内で人工授精を試み、直接孵化幼生を観察することにより、分析精度の向上に努めています。
当生物分析室では、イワシ類(シラス期~かえり期)や、ハダカイワシ類、スケトウダラ(稚魚期)、サケ(稚魚期)、クロダイ(稚魚期)など、さまざまな魚種の胃内容物分析を請け負っています。消化管内容物は可能な限り生物種にまで同定し、必要に応じて、消化管内容物の充満度、各内容物の消化度、体積なども測定し、各魚種によるエサ生物の利用実態や摂餌選択性の解明に努めています。なお、当分析室で、降海したばかりのサケ稚魚の胃内容物から、海域からのプランクトンとしてはほとんど採集されることないカイアシ類が多量に摂食されていることを発見し、新種Tortanus (Eutortanus) komachi Itoh, Ohtsuka & Sato, 2001として発表する機会を得ました。